多汗症
多汗症(たかんしょう)は、単なる「汗っかき」という体質ではなく、日常生活に支障をきたすほど過剰に汗が分泌される「疾患」です。 かつては有効な治療法が限られていましたが、2020年以降、ワキ汗や手汗に対して高い効果を持つ「保険適用の塗り薬」が相次いで登場し、皮膚科での治療が標準化されました。 当院では皮膚科専門医が、ガイドラインに基づいて、一人ひとりのライフスタイルに合わせた専門治療を提供いたします。
1. 多汗症とは
発汗は本来、体温を調節するための重要な生理現象です。 しかし多汗症では、この調節機能の範囲を大幅に超え、気温や運動とは無関係に大量の汗が出ます。
発症のメカニズム
汗を出す命令は、自律神経(交感神経)から伝達物質「アセチルコリン」
が放出され、汗腺(エクリン腺)の受容体に結合することで伝わります。 多汗症の方は、この神経伝達が過剰になっている、あるいは汗腺が過敏に反応している状態と考えられています。
原発性局所多汗症の診断基準
以下の項目のうち、2項目以上が当てはまる状態が6ヶ月以上続いている場合、医学的に「原発性局所多汗症」と診断されます。
- 最初に症状が出たのが25歳以下である。
- 左右対称に汗をかく。
- 睡眠中は汗が止まっている。
- 週に1回以上、激しい発汗がある。
- 日常生活に支障が出ている。
- 家族に同じ悩みを持つ人がいる。
2. 部位別の症状とQOL(生活の質)
多汗は精神的・社会的な負担となります。
① ワキ汗(原発性腋窩多汗症)
- 悩み: シャツに大きな汗ジミができる、1日に何度も着替える必要がある、ニオイ(多汗に伴う雑菌の繁殖)が気になる。
- 影響: 好きな色の服を着られない、挙手やプレゼンテーションをためらう。
② 手汗(原発性手掌多汗症)
- 悩み: 書類やノートが湿って破れる、スマホやパソコンの操作がしづらい、マウスがベタつく。
- 影響: 握手や手をつなぐことを避ける、細かい作業が困難になる。
3. 保険診療による治療
多汗症治療は「塗り薬」から開始するのが第一選択です。
ワキ汗治療
神経の指令をブロックする「抗コリン薬」の塗り薬です。
- エクロックゲル(5%ソフピロニウム): 1日1回、専用のアプリケーターでワキに塗布します。

- ラピフォートワイプ(2.5%グリコプロニウム): 1日1回、使い切りのシート(ワイプ)でワキを拭き取ります。 9歳以上から使用可能です。

手汗治療
- アポハイドローション(20%オキシブチニン): 2023年に登場した日本初の手汗用保険適応薬です。 就寝前に手のひらに塗布し、起床時に洗い流します。

ワキ汗重症例:ボトックス注射
外用薬で効果が不十分な「重度」のワキ汗に対し、ボトックス注射治療が可能です。
- 効果: 1回の施術で約3〜5ヶ月間、強力に発汗を抑えます。 夏前の3月〜4月頃の受診が特にお勧めです。

4. 自費診療(自由診療)
手のひら・足の裏のボトックス注射: 針を用いた注入のほか、当院では「キュアジェット(無針注入器)」を用いて痛みを抑えて導入することも可能です。
[キュアジェットのページを見る]
よくあるご質問(FAQ)
A. はい、可能です。 外用薬のラピフォートワイプは9歳から、エクロックゲルやアポハイドローションは12歳から保険適用となります。 学校生活でのストレスを軽減するためにも、早期の相談をお勧めします。
A. 抗コリン薬の特性上、口の渇き(口渇)や便秘、光をまぶしく感じる、といった症状が出ることがごく稀にあります。 また、塗布部位のかぶれが生じる場合もあるため、専門医が肌状態を見ながら調整します。
A. 手術(ETS)後の副作用として知られる「代償性発汗」ですが、塗り薬やボトックス注射では起こることは稀ですのでご安心ください。
6. 未承認医薬品等に関する表示
多汗症治療における「キュアジェット」の使用、および一部の自費診療用薬剤について、以下の情報を開示します。
キュアジェット(CUREjet)は、日本国内において多汗症治療の目的で厚生労働省の承認を得ていない未承認医療機器・医薬品に含まれます。
当院では医師の責任において、適正な輸入ルートを通じて導入しています。
国内において腋窩多汗症用の外用薬(エクロック等)やボトックスビスタは承認されていますが、他部位への無針注入を目的とした承認医療機器は存在しません。
キュアジェットは韓国KFDAの承認を取得しており、アジア圏を中心に安全に使用されています。国内未承認のため、副作用救済制度の対象外となります。
柏の葉キャンパス・柏・流山エリアで汗にお悩みの皆様へ
汗の悩みは、他人に相談しづらく、「体質だから仕方ない」と一人で抱え込んでしまいがちです。 生活の質を落とす多汗症は、皮膚科で治療できる時代です。ぜひお気軽にご相談ください。
監修:柏の葉スキンクリニック 院長 山下千聡 (日本専門医機構認定 皮膚科専門医)