アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、「かゆみ」のある湿疹が、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す皮膚疾患です 。 「薬を塗ってもすぐにぶり返す」「夜中のかゆみで眠れない」とお悩みの方は少なくありません。 当院では、皮膚科専門医が一人ひとりの病態を客観的な指標で評価し、赤ちゃんから大人まで、最新のエビデンスに基づいた最適な治療をご提案いたします 。
1. アトピー性皮膚炎の病態
アトピー性皮膚炎の病態は、「皮膚バリア機能の低下」「アレルギー性の炎症」「かゆみ」の3つの要素が複雑に絡み合っています 。
- バリア機能の低下:遺伝的要因(フィラグリン遺伝子の変異など)や乾燥により、肌の表面(角層)に隙間が生じます 。
- アレルギー炎症(2型炎症):肌の隙間から侵入したダニや花粉、細菌などのアレルゲンに対し、免疫細胞(Th2細胞など)が過剰に反応し、IL-4やIL-13といった「2型サイトカイン」を放出して炎症を引き起こします 。
- かゆみの悪循環(Itch-Scratch Cycle):炎症によって生じたかゆみ物質(IL-31など)が神経を刺激します 。 掻くことでバリアがさらに破壊され、さらなる炎症を招くという悪循環に陥ります 。
2. 年齢による症状の変化と「アレルギーマーチ」
アトピー性皮膚炎は、成長段階によって症状の現れる部位や特徴が変化します 。
- 乳児期(生後2ヶ月〜2歳):頭や顔から始まり、次第に体や手足に広がります 。 ジュクジュクとした浸出液を伴うことが多いのが特徴です 。
また、乳幼児期のアトピー性皮膚炎を起点として、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎が連鎖的に発症する現象を「アレルギーマーチ」と呼びます 。
早期に皮膚の炎症をコントロールし、皮膚バリアを修復することが、この連鎖を阻止する鍵となります 。
- 小児期(3歳〜12歳):肘や膝の内側など、関節の柔らかい部分に乾燥した湿疹が目立つようになります 。

- 思春期・成人期(13歳以降):顔や首、上半身に強く症状が出る傾向があります(顔面型) 。 掻き壊しを繰り返すことで、皮膚が厚くゴワゴワになる「苔癬化(たいせんか)」が顕著になります 。

3. アトピーの治療方針
アトピー治療のゴールは、「症状がない、あるいはあっても軽微で、日常生活に支障がない状態」を維持することです 。
リアクティブ療法からプロアクティブ療法へ
従来の「悪くなった時だけ薬を塗る」リアクティブ療法では、見た目が改善した直後に中止するため、皮下に残る「火種(微小炎症)」から早期に再発してしまいます 。 これに対し「プロアクティブ療法」は、一旦寛解させた後も週に2回など間隔を空けて、もしくは非ステロイド性の抗炎症薬を用いて、定期的に外用薬を継続し、再燃を未然に防ぐ標準治療です 。

4. 外用療法
年齢や症状の程度に合わせて、多様な選択肢から最適な薬剤をご提案します。
・ステロイド外用薬:炎症を素早く抑える基本薬です。 5段階の強さを適切に使い分けることで、副作用を最小限に抑えます。

・タクロリムス軟膏(プロトピック):ステロイドを含まない抗炎症薬で、顔や首など皮膚の薄い部位に適しています。2歳から使用可能です。

・コレクチム軟膏(JAK阻害薬):細胞内の炎症シグナルをブロックする新しい非ステロイド薬です。 生後6ヶ月から使用可能です。

・モイゼルト軟膏(PDE4阻害薬):かゆみや炎症を抑える新しい作用機序の非ステロイド薬で、生後3ヶ月から使用可能です 。

5. 全身療法
従来の外用療法だけではコントロールが難しい中等症〜重症の方には、以下の高度な治療が可能です 。
生物学的製剤(注射薬)
- デュピクセント:炎症とかゆみの根本原因(IL-4/IL-13)をピンポイントでブロックします。 高い効果と安全性が認められており、生後6ヶ月から使用可能です。

- イブグリース:2024年に登場した新しい注射薬で、IL-13を標的とします。 投与間隔の延長が可能になるなど、利便性が高いのが特徴です。

- ミチーガ:かゆみの原因物質(IL-31)をブロックする「かゆみ特化型」の薬剤です。 強いかゆみでQOLが著しく低下している方に適しています。

経口JAK阻害薬(飲み薬)
- リンヴォック / サイバインコ / オルミエント:細胞内のシグナル伝達を一括してブロックし、かゆみに対して非常に高い即効性を示します。
6. スキンケアと日常生活
薬の効果を最大限に引き出すためには、土台となるスキンケアが不可欠です。
よくあるご質問(FAQ)
A. 皮膚科専門医の管理のもと、症状に合わせて強さを調整し、良くなったら非ステロイド薬や回数を減らす「プロアクティブ療法」へ移行することで、安全に継続できます。むしろ、中途半端な使用で炎症を長引かせる方が、将来的なリスク(皮膚の萎縮や色素沈着)を高めてしまいます 。
A. 保険適用となりますが、高額な薬剤です。しかし、「高額療養費制度」や「付加給付制度」、自治体独自の「子ども医療費助成制度」を利用することで、実際の自己負担額を大きく抑えられる場合があります。
柏の葉・柏・流山エリアでアトピーにお悩みの方へ
アトピー性皮膚炎は、もはや「治らない病気」ではありません 。有効な新薬もありますので、かゆみによる睡眠不足や学業・仕事への支障を我慢せず、皮膚科専門医へご相談ください。
監修:柏の葉スキンクリニック 院長 山下千聡 (日本専門医機構認定 皮膚科専門医)