脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、皮脂の分泌が盛んな部位に生じる慢性的な皮膚炎です。 単なる「不潔」や「乾燥」が原因ではなく、皮膚の常在菌であるカビ(真菌)の一種が深く関与しており、適切な治療を行わないと、良くなったり悪くなったりを数年以上にわたって繰り返す傾向があります。
当院では、皮膚科専門医が診断を行い、原因にアプローチする抗真菌薬(ニゾラール等)や炎症を抑えるステロイド外用、生活習慣の改善指導を組み合わせた、エビデンスに基づく治療を提供いたします。
脂漏性皮膚炎の病態
脂漏性皮膚炎の3要素
- 皮脂分泌の過剰: ホルモンバランスや生活習慣により、皮脂腺から皮脂が多く分泌されます。
- マラセチアの増殖: カビ(真菌)の一種が、皮脂を分解して刺激物質(遊離脂肪酸)を作る。
- 宿主の反応: 生成された遊離脂肪酸が皮膚を刺激し、バリア機能を破壊することで、赤み、かゆみ、鱗屑(フケ)を伴う炎症を引き起こします。
部位別の症状と特徴
脂漏性皮膚炎は「脂漏部位」と呼ばれる、皮脂腺の密度が高い場所に好発します。
頭皮(フケ症)
- 黄白色の脂ぎったフケ、または乾燥した細かいフケが大量に出現し、頭皮に赤みとかゆみを伴います。
- 炎症が毛包に及ぶと毛髪の成長が阻害され、抜け毛の一因となることもあります。

顔面(Tゾーン・耳周り)
- 眉間、小鼻の脇(鼻唇溝)、耳の裏などに、境界がはっきりした赤みとカサつきが生じます。
- 「乾燥肌」と勘違いして過剰な保湿(油分補給)を行うと、マラセチアの餌を増やしてしまい、症状が悪化するケースが目立ちます。

乳児
- 赤ちゃんが胎内で受け取った母親由来のホルモンの影響により、皮脂の分泌が一時的に活発になることが原因とされています。
- 生後3ヶ月頃までにみられ、その後自然に落ち着いてきます。かゆみが強い場合には、外用治療を用います。

似ている皮膚疾患
脂漏性皮膚炎の治療において最も重要なのは、他の類似疾患との見極めです。
- 酒さ(赤ら顔): 小鼻周囲の赤みがある時の鑑別です
- 乾癬(かんせん): 頭皮のフケ、赤みがある時の鑑別です
- 接触性皮膚炎(かぶれ):頭皮のかゆみ・赤みがある時の鑑別です
脂漏性皮膚炎の治療
脂漏性皮膚炎は慢性疾患であるため、短期間で「完治」させることよりも、症状のない「寛解」状態を維持することが目標となります。
外用療法
- 抗真菌外用薬(ケトコナゾール等):
原因菌であるマラセチアの増殖を直接抑えます。 副作用が少なく、長期的なコントロールに適しています。 - ステロイド外用薬:
炎症や強いかゆみを素早く抑えるために短期間使用します。
補助療法
ビタミン剤(B2・B6): 皮脂の代謝を正常化させ、皮膚の健康維持を助けます。
生活習慣・セルフケア
正しい洗髪・洗顔
- 優しく洗う:
指の腹で頭皮をマッサージするように洗い、爪を立てて擦るのは厳禁です。強すぎる洗浄成分(ラウリル硫酸Na等)のシャンプーは控えましょう。 - すすぎの徹底:
シャンプーや洗顔料の成分が残ると、それが刺激となって悪化します。
食生活
- ビタミンB群の摂取:
レバー、納豆、卵、ブロッコリーなどにビタミンB2・B6が豊富に含まれています。 - 脂質・糖質の制限:
チョコレート、ケーキ、スナック菓子、脂っこい食事は、皮脂分泌を刺激するため、過剰な摂取を避けましょう。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 毎日洗っているのにフケが出るのは、洗い方が足りないからですか?
A. いいえ、むしろ「洗いすぎ」によって頭皮のバリア機能が低下し、炎症が悪化している可能性があります。 重要なのは回数ではなく、原因菌を抑える成分で優しく洗うことです。
Q. 脂漏性皮膚炎は人からうつりますか?
A. いいえ、原因となるマラセチアは誰の皮膚にも住んでいる常在菌です。 体質的な要因や皮脂のバランスによって発症するものであり、人からうつる心配はありません。
Q. 治療はいつまで続ける必要がありますか?
A. 症状が引いたからといってすぐに薬を止めると、再発しやすくなります。 医師の指導のもと、徐々に薬の回数を減らし維持していくことが大切です。
柏の葉キャンパス・柏・流山エリアで頭皮のフケ・かゆみにお悩みの方へ
脂漏性皮膚炎は、見た目の不快感やしつこいかゆみによって、QOL(生活の質)を著しく損なう疾患です。 市販のシャンプーなどで改善しない場合には、一度皮膚科専門医の診察を受けてみてください。
監修:柏の葉スキンクリニック 院長 山下千聡 (日本専門医機構認定 皮膚科専門医)